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第三話 史上最強を目指して
雀荘に入ると店内はまるでファミリーレストランのような明るくて賑やかな空間だった。そしてカレーの匂いがした。土曜日はカレーサービスデーだと言う事で今日は偶然にも土曜日。無料でカレーが食べれるらしい。
なんというか、想像してたのとはだいぶ違う。もっと薄暗くてけむりがすごいような店内で、蛍光灯がチカチカしてる中に黙々と男たちが牌を握っているのを予想していたが、店内は明るく賑やかで有線放送ではJ-POPが流れていて何よりキレイだった。
『富士』という昭和感の強いレトロな雰囲気を連想させる店名からは想像つかないくらいこの店は心地良い空間になっていたのだ。
ルール表には非常に簡単なことしか書いてなかったがそれがいいとも思った。要するに普通のルールだから書くことがあまりないという事。ルールなんて普通が一番いいに決まってる。真面目なアキラにとっては尚更だ。
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エンディングテーマ【結果論Happy End】作詞:彼方どれを選んでも結果後悔はあるなにを選んでも結果正解もある面白いね結果論成長しないね結果論どうやっても裏目る時はあるしなにやっても上手くいく時もある楽しいよね結果論向上しないね結果論でも、あの子には結果論でも私には必然のものもある私には結果論でもあの子には確信なものもあるそれは例えばパッションとか信仰とか? 願いとか。他人には分からない事情があるの、人それぞれの歴史の中に。だから結果論ありで行こう結果ロンならhappy endどの場面にも正解はあるどの場面にも不正解もある学びになるね確率論成長するね確率論どうやったら正しいか何を選んだら成功するか研究熱心燃えるよね実力向上素晴らしいねでも、それだけじゃないゲームの深さ世界の全てを知りたいなら私にはない考えでもそれを尊重して歩み寄ろうそれは例えば美しさとか面白さとか? 冒険心とか他人には分からない事情があるの、人それぞれの命の中にだから結果論もありで行こう結果ロンならhappy end結果論があるから楽しいなら
サイドストーリーLAST 木嶋秀樹の自慢話後編────── ──────「ハンデはあげる。君らは30000点、おれは10000点スタートでいい」「まいりました。兄さん」「おれたちはプロになるよ」「木嶋、おまえも受けてみないか」 ハッ!(なんだ夢か。……ずいぶん前の記憶を見たな。コテツは悪魔のように強かったし、あのケイちゃんを従えたという人間性も凄かったなあ。 ケイちゃんとユースケはずいぶん強くなってプロになったけど、おれはずっとハンパもんだ…でも、それでも…)「……そんな生き方も、悪くはない」とヒデはポツリと呟いた。そしてモニターを見ると丁度先ほどエンディングが終わった所で次回対局の組み合わせを表示していた。「……あー。エンディング見逃したかー」「ヒデちゃんあの歌好きだよな」「ああ、【結果論Happy End】な。あのバカバカしい軽い感じがな。(それでいいじゃないかと肯定してくれてる気がするんだよな)……帰ろ。悪いな今日も寝ちゃって。お勘定」 そう言うとヒデはポケットから財布を取り出して万券を店主に渡した。「いいんだよ、また明日も来てくれよな」「明日は仕事ないから来ないかも。でも雀荘に遊びに行ったら帰りに寄ると思う」
サイドストーリーLAST 木嶋秀樹の自慢話前編「今は時代が変わったよな。おれの常識じゃあノーレート麻雀なんて考えられないし、地上波で真昼間からプロの対局が観られるなんて、そんな時代が来るとは思いもしなかったよ」 酔っ払いながら安い飲み屋でプロ麻雀の放送対局を観ると、決まって男はそう言った。男の名前は木嶋秀樹(きじまひでき)47歳。「ヒデちゃんは麻雀観るの好きだよなあ」「そりゃ、好きさ。だってな、この番組作った人と会ったこともあるんだぜ。……あの頃はハッキリ言っておれは最低な人間だったけどな。でも、今になって考えたら…やあ、やっぱり最低だったよ! ははは! ……お! ケイちゃんは今日トップ取ったんだな。良かったあ。ケイちゃん良かった~。ははっ」(このおじさんいつも丸山圭一郎プロを『ケイちゃん』って言ってるけど、なんなのかな)(分かんない)とヒソヒソと店員さんが話している。ちなみにヒデは地獄耳だ。「あのさ、ケイちゃんとおれはクラスメイトで学生時代から卒業してもずっと、いつものようにつるんでたんだよ。ユースケも一緒の3人組で。バカばっかしてたよ。ほら、今日解説してるコイツ。これ、田中ユースケな」「へえー。おっちゃんスゲーんだなー」「おれはただの何者にもなれなかった男だよ。好きだった麻雀も結局弱いし、惚れた女とも…… 結婚して子供も1人いたのに離婚するし、仕事は転々として続かない……。安アパートで一人暮らしの。ただの猫好きなおやじさ」 うつろな目をしてヒデはそう言った。その顔は決して暗くはなく、むしろ、そんな人生も悪くなかったよな。と言っているようだった。「じゃあ丸山プロとユースケプロの他にも知り合いとかいたりしないの?」「あー、いるいる。スゲえのがいるよ。何を隠
101.エピローグ 勝者たちを讃えて 富士2号店はまたビルメンテナンスの日を迎えていた。何年ぶりだろうか。 そう、第2回富士2号店最強決定戦だ。 今回は財前姉妹や新店長アヤノも加わって女子勢が多くなった。アヤノは看板娘どころではない器の持ち主だった。今では富士2号店の店長なのだ。 もちろん前回優勝のシオリも参加している。今はもう富士メンバーではないアキラも社長に誘われて家族全員で参加した。 前回より大世帯の旅となったがそれを全員連れて行くのもわけないくらい富士2号店は流行っていた。それはそうだろう。何せ麻雀の大ブームを巻き起こしたプラスアルファリーグのその21人の選手たちのうちのなんと9人がここ富士2号店にいるのだから。 富士グループはスタッフのレベルも売り上げも知名度もその全てが日本一の雀荘になったのである。「これも全てマサルの手腕だな。お前を雇って正解だったよ」と中村社長がマサルを褒めた。「あはは、そんなバカな。私は少しアイデアがあっただけで、それが全て良い方向へ良い方向へと進んだのは運でしかない。それよりもコテツとアキラですよ。彼らが私たちをここまで導いたんだと私は思っています」「謙虚だな、相変わらず。だが、それはそうかもしれない。しかし、アキラ君や財前姉妹を雇ったのはマサルだ。これこそが大手柄だろう。寮も女子寮を作ってまで雇い入れて。マサルはやっぱり先見の明があるよ。お前はおれの福の神だ」「そうですかね。メタとアヤノさんの活躍も大きいと思ってますけど」「参加者は決定しましたかー? 決まり次第私に教えて下さいね。トーナメント表作るんで」と女子バイトの鈴沼エリが言った。いや、今は女子社員だが。
100.カラスたちの戯れ 最終話 魂の音楽 アキラの企画したプロ団体は想像のはるか上を行く大人気企画となった。 予想以上の大手がスポンサーに付いてくれたこともありプラスアルファリーグは地上波放送もされる超大人気番組となる。 アキラはここまでうまくいくとは想像もしていなかった。まさか道楽的に企画したものが大当たりしてしまうとは。 そもそも、戦術指南書だってコテツの思想、戦略、技術があまりに素晴らしいものだったから記録に残したいと思ってほんの趣味で書いただけだったのに、それを評価されて出版になり、文章力があるからと小説も書いてみないかと言われて書いたら超絶大ヒット。 雀神コテツに挑むっていう自分自身の青春の話がこんなに読者の心を掴むとは思ってもいなかった。 人生は何がどういうきっかけで化けるか分からない。 ほんの、ちょっとのことで過去全てが救われるような、このルートを辿ってきて良かったと思えるような。そんなことが急に起きる。それはアキラのような超の付く大成功に限った事ではない。例えば、メタ。 アイツはいい奴ではあるが女にはモテないやつだった。その点ではよくコテツやアキラのことをグチグチ言っていた。だが、今はどうだ。 心なしか見た目も健康的に痩せたし、誰かに浮いた話が出ても「へぇ、おめでとう」とか言ってるくらい余裕だ。 今のメタにはアヤノがいるから。 たった1人の愛する人と出会うだけで人生は過去全てが救われるもの。だから、どんな人生でも絶望することはないんだ。救いはいきなり訪れる。逆転劇は常に起こりうる。それが人生という舞台なのである。 あなたを救う人は今日訪れるかも知れないし。来年かもしれない。それは分からないけど、逆転の可能性だけはいつもある。それを忘れないでいれば、いつだって夢を見て明るく生きて行けるだろう。 正しく生き
99.第三十六話 アキラが描く夢の舞台 アキラの書いた麻雀指南書は大ヒットした。重版もかかり、その後アキラは麻雀小説も書く。それが飛ぶように売れてコミカライズ化が決定した。 アキラの書いた物語はあれよあれよと話題になってコミックからそのままアニメ化。実写ドラマ化。映画化。実写映画化。と勢いよく売れに売れて阿佐田哲夜の再来とまで言われた。 ここまで、ツキとは無縁の誰よりも地道で堅実な麻雀をしていたアキラにここぞとばかりの大ヅキが訪れたわけだ。 気がついたらアキラは一代で財を成した成功者になっていた。 その財産を使ってアキラはひとつの企画を思い付いた。本当に強い雀士しか参戦することの出来ない真のプロリーグを設立して、最強とはどういう事かを見せつける。それを映像対局で放送するのだ。「……そうだな、元々雀荘勤めで、給料+αを貰うような次元の連中のみ集めよう。入団資格は雀荘に最低半年勤めて1ヶ月に100打数以上は打つという決まりを設け、その6ヶ月の成績のうち最低でも2ヶ月は純黒(純粋な黒字成績の事。ゲーム代を支払った上でも勝ち切る程の強さを意味する。素人には不可能な超弩級の好成績と言う事)を出すというハードルを設けよう。本当は3ヶ月と言いたい所だが、そうなると僕自身も難しいからな……。あとは、タイトル戦で3つ以上タイトル取ったプロなら無条件で資格ありにするか。 名前は真・麻雀プロ団体【プラスアルファリーグ】なんてどうだろう。 それで、プラスアルファリーグはチーム戦にするとか。チームごとに競い合うプロリーグなんて今まで無かったからそういうのも面白いよな。プラスアルファリーグに参戦可能な資格を持った雀士たちをこちらが野球のドラフト会議みたいに取っていく。そんな仕組みにしたりして、うん面白い、やばいなアイディアが止まらない。 ……アイツらとは別チームになりたいな。やっつけてこそのライバルだ。でも同じチームにいたら心強いし、あー、アイツらどうしよう」とアキラは夢を膨ら
6.第六話 計算女王 シオリ シオリは計算機のような女だった。一流大学大学院まで行って化石の研究チームにまで入って勉強していたが時給の高いアルバイト先の雀荘で「本走入れればもっと時給上がるよ」と言われて麻雀を覚え「プロになればさらに時給上がるし今なら社員旅行で沖縄も行けるよ」と言われたのでプロ試験を受けた。結果はなんと首席合格。大学院は2年で辞めてプロ麻雀プレイヤーとしての道を進む。 シオリは瞬く間に頭角を表した。時給UP&沖縄旅行目当てでしかないのでプロリ
5.第伍話 4人目の男 アキラ お父さんは普通のサラリーマンで夜6時に帰ってくる。お母さんはスーパーのレジのパートタイマーとして働いていてごく普通の家庭に育った。 特別なことはなく、どこにでも当たり前にある平凡な暮らしをしていたと思う。 妹が1人いて兄としてしっかりしないとという気持ちはあったから普通に進学して普通に就職を何となくだけど目標にしてた。 特別とは程遠い普通の人。それが自分。 そう自己紹介するのは4
4.第四話 コードネーム ジンギ いわゆる義賊の真似事だった。 悪人から大金を巧妙に騙し取って。表に出せない金だから泣き寝入り。そんな、悪人を騙しまくる天才イケメン詐欺師ギンジ。 巷ではその悪人だけ狙った義賊的な活躍からコードネーム『ジンギ』と呼ばれていた。 ジンギが悪党から奪った金は2億円にもなった。 それだけあればもうリスクを背負って詐欺を働く必要もないと思い、そこで詐欺師稼業か
3.第三話 責任者 マサル マサルは家庭環境に恵まれていなかった。 幼少期に両親が離婚していて母と姉との3人家族で質素な暮らしをしていた。 趣味と言えば将棋で。いつも近所に住む同年代の仲良し3人組で将棋を指していた。 マサルには将棋の実力があったが、3人の中では1番強いのはシンイチ君で、マサルは2番手か3番手の実力だった。 マサルの学力は高くて、中学に入学してからも難なく学力テストは